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Present is ...


ゆっくりと目を開ける。
辺りは闇。
どんよりとした曇天に石畳の続く道。
周りにはレンガ造りの高い建物。
足元には降ったばかりの雪が積もり
かすかに漂う霧に街灯の薄明かりが反射する。

此処は……

ぼんやりと辺りを見回し一歩踏み出す。
その時……

「キャー!!」

突如、後方から甲高い叫び声が上がった。
振り返ると黒いものが視界をかすめる。

――― 人……??

反射的に体を反転させて後を追う。
その途中に見えたのは雪の上に屈む1人の女性。
白いコートを身に着けたその若い女性はしきりに何かが走ったほうを指差し叫ぶ。

「――― 誰か……取り返して………!!」

弱々しい涙声。
他に動いているものは無い。
黒い塊だけが逃げるように去っていく。
その動く黒いモノをただ無心に追いかけた。


自分の吐いた白い息が顔にかかる。
不思議と息はあがらない。足も疲れない。
ふっと鋭く息を吐き、今度は深く息を吸いながら一気にスピードを上げる。
黒い影が近くなる。
見当たらないのに木々のざわめく音が聞こえ、辺りの闇は深くなる。

……壁、だ………。

赤黒いレンガの壁がぼんやりと視界に浮かぶ。
後5、60メートルすれば行き止まり。
考える事も思う事も無く徐々に距離の迫りつつある黒いモノをただ追った。


ザッツ……

急に黒いモノが停止した。
そしてゆっくりと振り向く。
……人をゾッとさせるような横顔。
憎しみをたたえたかのような赤い瞳は雪よりも冷たく、鋭い。
少し開いた口元からは冴え冴えとした歯が見える。

これは……人なの…か………?

体が前へと進まない。
目を逸らすことにすら恐怖を覚える。
一瞬―――その黒いものは不気味に微笑んだ。
その瞬間強い風が巻き起こりそれは宙に浮いた。
勝ち誇ったような高笑いを浮かべ高く上へと離れていく。
しばらく呆然とそれを見上げる。
少しの恐怖と戸惑い。
そして何故か深い絶望と寂しさ悲しみを感じた。


「ゴーン……ゴーン……」

不意に鐘の音が聞こえた。
同時に上からうめき声が聞こえた。
高い空へと登って行った黒いモノが落ちてくる。
もう先程の笑みは無く赤い目の光も消えていた。

その鐘は12回鳴り続き、止まった。
空からは再び雪が降り始めた。
もう動かなくない黒いモノ。
その上に少しも穢れの無い真っ白な雪が積もっていく。
それは気高さをも感じさせるほど純白に煌いていた。
黒いモノは埋もれてもう見えない。
そして雪が強い輝きを放った時、その黒いモノは跡形も無く消えた。
その後にはポツンと茶色にぼんやりと光る紙袋が残されていた。
そっと手にとるとほんわりと暖かい何かが体に流れ込んでくるような感じがした。


走ってきた道を引き返し紙袋の持ち主にそれを返す。
「ありがとう……。」
そのヒトは少し微笑んで受け取った。

何もしてない。目の前で消えただけ。

そう言うと

でもあなたはアレを追いかけてくれました。
これを拾って此処までとどけてくれました。
ともう一度にっこり笑った。
私はクリスマスの贈り物、「幸せ」を運ぶ天使です。
アレは幸せを厭う悪魔。
動きの取れないクリスマスを前に、幸せの全てを奪っていこうとした
人の幸福を妬む悪魔。

あなたは優しい人ですね

そして最期にそのヒトは、
そう言って袋の仲から光る塊をひとつ取り出すと渡したくれた。
それはぼんやりと暖かく手のひらにふわっとのった。

「貴方にも幸せが訪れますように。メリークリスマス。」

そういい残してそのヒトは消えた。
最後に少しだけその白いコートが光って見えた。

時計を見るとは0時30分を指していた。
日付は12月25日になっていた。


―――目が覚めた。
目を開けるとまぶしいほどの朝日が流れ込んでくる。
カレンダーを見ると今日がクリスマス。

そうか……夢か。
あくびをして起き上がる。

でも、どうせ今日は何の予定もない。
何をしてすごそうか。

ぼーっと宙を眺め、昨日の事を思い出す。
少しだけ寂しさを感じる。

携帯が鳴った。

「あ、起きてた??昨日はごめんね。今日……今から会える??」
「………。」

幸せが訪れますように…か……。

あのときの言葉を思い出し少し、手のひらを見つめる。

「いいよ。お前んちまで迎えに行くから。」

少しだけ微笑んで了承の返事を返すと、
急いで身支度を整えて、小さな包みを手に持ち、外へと飛び出した。
















2007/12/24